君のために歌う歌
お客さんこそ少なかったが、『誰も知らない』はガールズバンドながら、可愛さを出さずにかっこいいバンドだった。



彼女達が律儀にお辞儀をしてはけると、次は高橋達のバンド『 high cloud small wood』 の出番だ。


「ちょっと誘導してくるね」


宙子はそう言って席を立った。


「俺も行く。」


陽翔はついてきた。



『誰も知らない。』のメンバーにステージ前の警備を頼んだ。

ステージの前にはロープが張ってあり、そこから前へ進まないようにするスタッフの役割だ。


高橋には

「心配してないから楽しんで。」


と言って背中をバチン!!と思い切り叩いた。


「って!!馬鹿かお前!!今ので絶好調じゃなくなったわ!」


怒る高橋にバンドメンバーはクスクスと笑っていた。



「いっちばん前で見てやるから期待しとけよー!」

いつの間にか現れたミクもとい郷愛が言った。


お前が期待しとけよ、と高橋は郷愛にデコピンをした。



「章、楽しみにしてる。」


陽翔も笑って、高橋に言った。


「おう!まかせとけ!」


高橋も笑い返した。
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