君のために歌う歌
挨拶をせず、高橋達は突然のように演奏を始めた。
その音は、思いの外重く、ロックだった。
爽やかな目立たない高校生男子、といったメンバーだったが、演奏が始まった途端豹変した。
ドラムの、いかにもオタクっぽい少し太めの男子は喜々としてドラムを叩きまくり、
ギターのメガネ男子はメガネが吹っ飛びそうなほど頭を振り乱し、
もう一人のギターの男子はステージの前に出てきて客を煽りまくっていた。
高橋だけが淡々と、真ん中で、ベースを引きながら歌い上げる。
最初の2曲は9mm Parabellum Bulletの曲だった。
宙子が中学生の合唱祭で見た高橋も、9mmだった。
かっこいいと思って、実は宙子は一時期聴いていたことがある。
拍手を送りながら、
(相変わらず上手いな。)
そう思っていると
「章上手いな!!!awesome!!」
陽翔が賞賛の声を上げたので、宙子は思わず笑顔になった。