君のために歌う歌
宙子は高橋達に警備をかわるように指示した。


陽翔は、ステージ脇で出番を待った。



その顔は、ステージの真ん中をまっすぐ見ていた。



(集中してるのかな……。)



宙子はそう思ったが、緊張や集中し過ぎるのは良くない、と思った。


宙子は陽翔の服の裾をちょんちょんと引っ張った。



陽翔は振り向いた。




「あ、あの。楽しんで、ね。」



いざ言おうと思うと、そんな事すら言うのが大変だった。



陽翔は、少し驚いているようだった。


しかし、すぐにフッと笑うと、


「ふふ、緊張してるように、見えた?

大丈夫だよ、ありがとう。

歌う俺はいつでも大丈夫。



ひろ、楽しみにしててね。」



そう言って、頭をポンポンとした。



「さ、もうすぐ時間だ!よく見て、きいてね!」


陽翔は宙子に席に戻るように促した。
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