君のために歌う歌
自意識過剰だと思った。それでも、


(私を見て、愛の歌を歌ってもいいですか?って、聞いたのに。)


そう思ってしまう自分に、酷く馬鹿らしいと思った。



(ヒロが私のこと好きな訳ないの、自分で分かってるでしょ!)



そう言い聞かせた。





陽翔は楽しそうに歌い、観客はもはや手を挙げて横に揺れている。








何度も自分に言い聞かせてきた宙子はなんだか涙が出てきそうだった。




この時間を楽しめていないのは自分だけだと思った。






(もう、本当に、諦めた方がいいのかな……)





宙子の目から一粒涙が落ちたとき、ちょうど曲が終わった。




すると、陽翔はスッと、宙子に視線をうつした。
 
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