君のために歌う歌
「ひ、ヒロ!お疲れ様!」


宙子は声がひっくり返りそうになった。



陽翔はにっこり微笑んだ。


「じゃあ、行こうか。」



そう言って、宙子の手を取った。




「へ?」



「ほら、早くしないと文化祭終わっちゃうよ!」


陽翔は手を引きながら言う。



「で、でも私まだ実行委員としていなくちゃいけないしヒロは警備しなきゃ……」



とん、と背中を押された。

高橋だった。


「行ってこいよ。警備ぐらいしてやるよ、暇だし。」


ぶっきらぼうにそう言った。



「高橋…!」



今度はドーン!と背中をおされ、ぐえと変な声とともに、宙子は思わず陽翔の胸元に飛び込んでしまった。

「な、な…!」


そんな事をするのはもちろん郷愛だった。



「行ってこいよ!誘導くらい任せとけ!こんな祭の日は先生だって気にしてないさ!」


郷愛親指をぐっと突き出した。



「郷愛……」



宙子は二人の優しさに泣きそうだった。



< 294 / 303 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop