君のために歌う歌
予備準備室Aは、入口前もひまわりの写真で埋め尽くされていた。


二人は、その前に手をつないで立った。


校舎の外れにある予備準備室Aの周りには、もはや人気(ひとけ)はなかった。


「郷愛、すごいね。」

「すごいね。」



宙子はドアを開けた。



ふわっと、目の前に広がったのは、実物大のひまわりの写真が所狭しと貼られた世界だった。


「す、すごい…!」


陽翔も入ってくると、わぁと声をあげた。



と、足元を見ると、実物大の陽翔がしゃがんで微笑んでいる写真のパネルがあった。


パネルからは吹き出しが出ていて『ゆっくりしていってね』と言っている。


「なにこれ。」

宙子は笑った。



陽翔はあちゃーと言うと


「中庭で撮られたやつだ。こんな風に使われるとは。」


とは言うものの、嬉しそうだ。


自らパネルの脇に同じようにしゃがんで宙子を見上げると


「ゆっくりしていってね。」


と言った。



「可愛すぎだよヒロ。」


宙子が笑った。
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