君のために歌う歌
高橋はカバンをパイプ椅子に置き、申請書をその中に雑にしまった。



「まだヒロ…トくんのこと見たことなかったんだ?」



「うん。別に男に興味無いし、お前のクラスと体育一緒になったりしないしな。」



「まぁねぇ。でもクラス近いし、うちら話してたし気にならなかった?」


「なんだろ、逆に打ちのめされそうで見たくなかった。」



高橋が妙に真面目な調子でいったので宙子は思わず笑ってしまった。



「何それ。」



「こう見えてもオレにもプライドってものがあったようだな……。」



高橋がセリフじみた調子で言ったので宙子は更に笑った。


「でもさ!実際見てみたらなんかアレだな、ありがたいわ。」




高橋はなんだか楽しそうに言った。



「ありがたいって。」



宙子も笑った。
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