ごめん、好きすぎて無理。
成績優秀、生徒会長、教師を始め男子生徒にも女子生徒にも人望がある、そんな奴に息抜き、ねー…
『相原君、今、私みたいに完璧な奴でも息抜きとかするんだ、とか…考えてない?』
突然、自分の想ってることを言い当てられ、俺は咄嗟に自分の手を顔の前でブンブンと振った。
『相原君、口堅そうだから、私の秘密を教えてあげる』
心の声がバレバレで焦っている俺を面白がっているのか、笹本はクスクスと笑っている。
『女神の秘密ってなんだよ?』
俺はなんでもなかったように、努めて冷静に問いかける。
『私さ、全部演じてるの、自分の人生』
笹本はそう言って、そして少し寂しそうに笑っている。
『…演じてる?
女神を演じてる、そういうこと?』
『そうだよ?
親の前では、親の顔色をすぐに読んで、親の想ってることに忠実に応えられる子。
親戚、学校、どこに出しても褒められるような、そんないい子。
先生の前では、成績優秀、生徒会長まで努める模範的な生徒役。
いい大学に行かせて、学校の名前を有名にする、その仕事をしてくれる役。
男子生徒が求める、癒しのような存在、でも女子生徒に悪く思われないように防御線張っていい人を演じる。
ずっと、ずっと、みんなが求める、そんな人物になる、そんな人物を演じる、それが私の存在意義』
………なんだ?
ひとまず、こいつの話を聞いて、彼女の言葉を簡単に受け入れることが出来る頭を持ち合わせてなくて本当に良かった、そう思った。
てか、頭を整理すると、親にも教師にも、友達にも、みんなに本当の笹本 紗奈を見せてない、そういうこと、だろ?
『面倒くせー人生だな……』
俺は、横に座っている、笹本にそう答えた。
『……息がつまりそう。
でも、みんながにこやかに私を求めようとすると、なんだか昔からの癖でそうしちゃんだよね……。
いつも、心の中で、“本当の私はこんな子じゃない”、そう、叫んでるんだけどね…』