ごめん、好きすぎて無理。








『……海君が言ったこと、あれが彼の、いや裏切られた人間の本音だ…。

 君も紗奈もお互いに想い合うことはできても、周りの人間の想いに鈍感過ぎるよ。

 本当に君と紗奈が結婚すること、それがいいことなのか?』





俺も紗奈も黙る。


いや、何も言葉にして出せないー…







海を裏切る、

海を傷つける、


ずっと、ずっとその考えは俺の心にあったはずだ。


紗奈を想う、その想いの隣に海のことだってあったはず。



それなのに、それでも俺は海を傷つけたー…






俺の想いを優先すれば海が傷つき、


海の想いを優先すれば俺がー…








『……紗奈、お前は結婚の約束をした海君の元に行きなさい。
 もし、彼がお前を許してくれるというのなら、今度こそ彼を幸せにしてあげなさい』




紗奈のお父さんの声はとても小さくて、弱々しくて、でも紗奈を想っての言葉だと思った。









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