ごめん、好きすぎて無理。





『……陸、陸が好き……。
 私にはその気持ちしかない…嬉しいくらい、悲しいくらい、怖いくらい…。

 陸のことが好きなの……陸が私の生きる意味だった……陸が私の希望だった……。


 でも……私が陸を好きだと、お父さんも…海君も……陸も傷つけちゃう………。

 もう……陸を好きだとも言えない……陸と離されちゃう……よ………』






笑顔もない、

本当に生気さえ感じない、

まるで死者の世界に続くドアを叩いてしまったような…そんな勢いのあるほどの絶望を表した顔…








『………紗奈、俺は離れないよ……』






俺のその言葉に、紗奈が俺の目を見つめる。







『……でも……無理だよ………これ以上誰も傷つけられないよ……』





紗奈のその心細い言葉が俺の胸を突く。









『……傷つけたかったわけじゃない……。
 他の人と同じように、ただ人を好きになった、想われたかった……それだけだった……。


 でも…それは他の人を巻き込んで、他の人の想いを踏みにじって…裏切って、傷つけて…。


 陸まで……陸まで傷つけた……陸のことまで………』













『……紗奈、俺は傷ついてなんかないよ』







『俺はお前と会って、お前に想われて、お前を想って、すっげー幸せだったよ?
 俺がお前を好きになりすぎただけ、だからお前のことに敏感になりすぎただけ。

 なぁ…紗奈、お前は俺のことが好きなんだろう?
 俺、言ったよな…俺のことが好きなら、俺から離れるなって…。

 約束、破るなよ……』







俺はそっと今にも壊れてしまいそうな、そんな紗奈を抱きしめる。




脆くて、壊れやすそうで、だから大事にしたいー…






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