ごめん、好きすぎて無理。
『……あ!』
海が出入り口から出ようとした瞬間、廊下から病室に入ろうとした看護師の高木さんとぶつかり、持っていた体温計やらが床に散らばった。
『……ごめん』
海は慌てて床に散らばった体温計やらを拾い集め、高木さんに渡す…
『………え……沙羅……?』
海は、そう言ったんだー…
『……やっぱり…海、だったんだね………』
高木さんも海を見て、そう言った。
知り合い?
俺がそう思ってる、その横で、紗奈が口を開いた。
『……さら……あ!
あ、あの!』
紗奈は海を見つめている高木さんに声をかけた。
紗奈に声をかけられ、ハッとその声に反応した高木さんは、海の横を通り過ぎ、紗奈のベッドまでやってきた。
『…あ、……えっと検温してもらいに』
『あの…高木さんの名前って沙羅って言うんですか?』
高木さんの言葉を遮り、紗奈はそう問いかける。
『え、えぇ、高木沙羅っていうの』
そう答えた高木さんを見て、紗奈は驚いた顔になる。
俺はそんな紗奈の顔を横から見て、紗奈に“知り合い?”と耳打ちする。
『…今日がはじめまして、だけど。
沙羅さんは聞いたことあるから…』
紗奈はそう、答えた。
『俺……帰る。
紗奈も体、大事にな…』
海はそう言って、振り向くこともせずに病室から出ていった。