ごめん、好きすぎて無理。
『高木さんの泣くくらい想った相手って……海君、ですか?』
紗奈がそう問いかけると、高木さんは一瞬の間をあけて、そして首を縦に振った。
『……あの、差支えなければ……話を聞いてもいいですか?』
紗奈の言葉に、俺も心の中で同調する。
海の過去、海と高木さんに何があったのか…
ただの興味本位なのか、それとももしかしたら高木さんと海の過去を知ることで、今の海を救える何かがあるんじゃないのか、そう思っているのかー…
『……海と出会ったのは海が高校三年の時よ。
同じ敷地にある大学と高校、海が入学した時、高校は当然のこと、大学の方でもカッコいい子が高等部に入学したって噂で回る程だった…。
当時の私にはお付き合いをしている人がいたし、そんな噂に全然興味なんてなかったわ。
でもね、体育館でバスケをしている海に出会ってしまったの…』
『海がシュートを外した時のボールがたまたま外に転がってきて、それをたまたま拾った、そしてそのボールを取りに来た海に渡した、ただそれだけのこと。
でもね、海が“ありがとう”って言って笑顔を見せてくれた時、自分でも分からないほど目の前にいる海にドキドキしてね…。
気が付いたら、いつも高等部の体育館に寄ってた。
海目当ての女の子は高等部だけでなく大学の方にも沢山いてね、私はいつも紛れるように海を見てたんだ…』
淡々と高木さんが話す、その海はいつもみんなからチヤホヤされている海で、同じ顔をしているのに、俺との差に少し悔しい気持ちが芽生えた。