ごめん、好きすぎて無理。






『………出会ってしまった……海に。
 でも……出会えたのに、海には私じゃない人がいるなんて………』





紗奈は慌てて、ベッドから身を出し、高木さんの手に自分の手を置く。






『……沙羅さん?
 海君とは別れましたよ。

 それに海君はとても純粋な人です。
 一度は私と付き合ってしまったけれど、それでも海君の心の中に沙羅さんがいることは確かですよ。

 だって、私を見て、“沙羅”って言ったんですよ?
 それって、海君の心の中に沙羅さんがいるから、じゃないですか?』






高木さんが顔を上げる、後ろ姿しか見えないけど…。


それでも肩が細かく震えているのが分かる。








『沙羅さん、出会ったのは運命なんですよ、きっと。
 私は海君の傍にいても傷つけて裏切ることしか出来なかったけど。

 沙羅さんなら海君の傷を癒せると思うんです。
 沙羅さんなら海君を幸せにしてあげれると思います。


 だから、だから今度は沙羅さんから海君に想いを伝えてみませんか…?』







『………え……?』






『だって…沙羅さん、海君のこと、好きですよね、今も…。
 今も記憶の中の海君を思い出しては、その海君を想って涙を流してしまうくらい……

 それなら、言ってみましょうよ!
 想いを全て、海君に伝えてみましょうよ!

 言わなきゃ…例えそこに上手くいくチャンスがあっても相手にそれは伝わりませんよ!』







紗奈は真剣な顔で、高木さんにそう言った。




高木さんは数秒の間をあけて、でも首を縦に振った。








『……もうダメかもしれないけど。
 今度は私から海に言ってみる…。
 海が何度も私にそう言ってくれたように…』








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