ごめん、好きすぎて無理。
事件が起きて
俺はそんな二人のやり取りを聞き、今度こそ病室を後にした。
いくら海が紗奈と婚約破棄になったとは言っても。
紗奈と別れたばかりと言っても。
可能性はかなり低いかもしれない…。
だけど、紗奈を奪った身として、いや奪った身だからこそ、海には幸せになってほしい。
そのチャンスがあるなら、海にはそのチャンスに乗ってほしい…
自分勝手な想いで、自分勝手な考えだ。
でも、それでも弟の幸せは願いたい…。
一人廊下を歩き、自動販売機までやってくると、自動販売機に向かい合う形で置かれたソファーに座っている人影が見えた。
自動販売機の明りに照らされ、それがすぐに海だということが分かる。
『………海…?』
俺が声をかけると、海は顔を上げ、俺を見つめる。
『……………陸………』
その何もかも全てが終わった、というべき顔をして、海は俺の名前を呼んだ。
『………お前、何やってんの?』
俺は海に近寄り、海の目の前に移動する。
『……うん、紗奈を兄貴に奪われてションボリ…』
『………海……』
『……こんなに落ちるんだな、好きな女に裏切られると…。
すっげー大事な兄弟からこんな風に奪われると……』
海の言葉はそのまま過ぎて、またもや俺は何も口に出せなくなる。
『……兄貴、元カノと再会した時ってどんな気持ちだった?
てか…あの頃の想いとか思いだす?』