ごめん、好きすぎて無理。





それは純粋に紗奈とのことを聞きたくて?


それとも、高木さんとの再会に、自分の想いを確認したくて?




海の表情からはそのどちらかを聞きたいのかが分からず、俺はただ黙って海を見つめる。











『………俺さ、すっげー腹立ってんの。
 すっげー悔しくて、悲しいの、紗奈とのこと。

 でもさ……不思議なんだよね…。
 やっぱり紗奈と結婚しなくて良かった、そう思う自分もいるんだ。

 結婚してから紗奈の兄貴への想いを聞かされるのも辛いけどさ、なんか自分の中に果たせてない約束っていうか…果たしたかった約束があるのに、結婚してもいいのかな……なんて、ずっと思ってたからさ…』






海の果たせてない約束。

海の果たしたかった約束。



その約束の相手は高木さん、なのだろかー…


その約束の内容は“もう一度会ったら、幸せにする”、だろうかー…











『海、さっきの人と知り合い?
 お前が病室出てくる時にぶつかった、あの看護師さん…』





俺の言葉に海は驚きの顔を見せて、そして視線を下にずらしながら、首を縦に振った。






海のあの人のこと、それは高木さんから聞いてる。




でも海の口からも聞きたい、そう思った。








『…どういう知り合い?』






『………好きになりました、の奴…』






海はそう答えると、自嘲気味に笑ったー…











< 129 / 159 >

この作品をシェア

pagetop