ごめん、好きすぎて無理。
それは純粋に紗奈とのことを聞きたくて?
それとも、高木さんとの再会に、自分の想いを確認したくて?
海の表情からはそのどちらかを聞きたいのかが分からず、俺はただ黙って海を見つめる。
『………俺さ、すっげー腹立ってんの。
すっげー悔しくて、悲しいの、紗奈とのこと。
でもさ……不思議なんだよね…。
やっぱり紗奈と結婚しなくて良かった、そう思う自分もいるんだ。
結婚してから紗奈の兄貴への想いを聞かされるのも辛いけどさ、なんか自分の中に果たせてない約束っていうか…果たしたかった約束があるのに、結婚してもいいのかな……なんて、ずっと思ってたからさ…』
海の果たせてない約束。
海の果たしたかった約束。
その約束の相手は高木さん、なのだろかー…
その約束の内容は“もう一度会ったら、幸せにする”、だろうかー…
『海、さっきの人と知り合い?
お前が病室出てくる時にぶつかった、あの看護師さん…』
俺の言葉に海は驚きの顔を見せて、そして視線を下にずらしながら、首を縦に振った。
海のあの人のこと、それは高木さんから聞いてる。
でも海の口からも聞きたい、そう思った。
『…どういう知り合い?』
『………好きになりました、の奴…』
海はそう答えると、自嘲気味に笑ったー…