ごめん、好きすぎて無理。
『……そっか』
俺が返事に戸惑うと、海は言葉を続け始めた。
『彼氏がいる人だったんだ。
最初出会ったときは彼氏がいるなんて知らなくてさ、どんどんその人を好きになっていく自分がいた…。
好きになってほしくて、気持ちを伝えたくて、笑顔を見ていたくて…。
でも好きの想いがすっげー強くなった時、彼氏に誘惑するなと言われて、初めて彼氏の存在を知った…。
けどさ、彼氏がいるって分かってても…それでも止められなかったよ、その人を想う気持ちだけは…。
だから、その想いは…紗奈を見ていてあの頃の自分を見ているかのようだった…』
海………
『……その人とも約束したんだ。
もう一度出会うことが出来たのなら、今度は絶対に俺が幸せにしてやるって…。
でも、俺はそんな約束を忘れたふりして、紗奈と………』
『……なんで忘れた振りなんかしたんだ?』
『…叶わないからだよ。
そう言った時も、少しずつ時間が経っても……それでもこの約束を叶える時は来なかったから…。
だからもう二度とそんな時はない……だからその約束をなかったことにして生きていこうと思った、思ったんだよ…』
いつか果たせる約束と、そのチャンスさえなく口約束のまま終わっていくだけの約束…
その違いは何にあるのかー…
俺は紗奈を見て、思う。
その違いは、どうしてもその想いを叶えたい、そう本気で願って行動する奴にしか神様はそんなチャンスを与えない、ということ。