ごめん、好きすぎて無理。
俺と海はひとしきりそこで天井を見つめ、どちらともなくその場を離れた。
『……陸はもう少しいんの?』
『携帯とか置いてきたまま来ちゃったから』
『そっか…じゃ、俺は先に帰る』
『気をつけて』
と、言ったところだったー…
『高瀬さん、病院ですよ!
しっかりしてください!』
けたたましい音が静かな廊下に鳴り響く。
ストレッチャーを数名の看護師と救急士が押している、正にその姿に、俺と海は目を奪われたかのように見つめる。
『………高瀬……』
不意に海がそう呟くも、俺はあまり意識していなかった。
『高瀬さん、病院ですよ!
しっかり、しっかりね!』
そう呼ばれ続けるも、ぐったりしているのか、その人の反応も見えなかった。
そのまま奥の方にストレッチャーが入っていくのを俺たちは見守る。
『じゃ……俺、行くわ』
俺がそう言うと、海は未だストレッチャーが運ばれていった方ばかりを見ていた。
『…海?』
海を名前を呼ぶと、海はそれに気付いて、俺の方に視線を向ける。
『どうした?』
『いや……なんでもない…』
でも海はそう言いながらも、さっきと同じとことに視線を戻し、そして怖い顔をしながら見つめていた。
それは“なんでもない”ではないように思う、でも俺はそれ以上、海に問いかけることはしなかった。