ごめん、好きすぎて無理。
『きょ…恭二君!』
高木さんがそう叫んだ時には、激痛が頬から体中に移動していくのが分かった。
『恭二君、この人は海じゃない!』
そう叫んでくれたのはいいけど、でも高瀬という奴は俺の顔を睨みつけいて。
『この人は海の双子のお兄さんよ!』
高木さんがそう発した、その本当に数秒の間、高瀬の目が高木さんの方に動いたのを俺は見逃さなかった。
俺は胸ぐらを掴んでいるその手を掴み、その手に力を強めていく。
『…………もうやめて。
恭二君…私が勝手に離れてしまったことが許せないなら、謝るから……。
だから、その人を離して……その人には全く関係ないの……』
『沙羅が俺の元に戻ってくる、そう約束するなら放してもいい。
あいつにも手は出さない』
高瀬の言葉に、沙羅さんは間をあけた。
『分かっ』
『ダメだよ、高木さん!』
俺は高木さんの返事を遮り、高木さんを強い目で見つめる。
『高木さんがこの人のことが好きなら認めていいけど。
もし違う人を想って、そいつを守るために犠牲になるなら、そいつは喜んだりしないよ!』
『絶対、そいつは喜ばない…!』
そう付け足すと、高瀬は俺の胸ぐらを掴む腕に力を込める。
俺もその手をどけようと必死に掴んだ。
『……あいつはあの時も殴られる覚悟くらい、あったと思うよ。
俺だったら好きな女守るためならどんなに殴られてもいい覚悟、あるから。
あいつもそうだよ!』