ごめん、好きすぎて無理。






『…………陸、カッコいいこと、俺の代わりに言わないでくれる?』







海の声がしたー…




その方向に顔を向けると、そこには海が立っていて、俺の胸ぐらを掴んでいる高瀬を睨みつけた。









『そっち、俺の兄貴だから手、離してくれる?
 俺の代わりに傷だらけになっちゃうと泣く奴、いるから』




そう言って、海はスタスタとこちらまで歩いてきて…




そのまま俺の胸ぐらを掴んでいる高瀬を殴り飛ばした。










『高瀬先輩、もうやめましょうよ。
 俺を憎んでるなら、沙羅のところじゃなくて俺のところに来てくださいよ?

 沙羅を想ってるなら、沙羅の前でそういうだっせーことしないでください』






息一つ乱さずに、海はそれだけ言うと、倒れている高瀬に手を差し伸べた。








『……なんだよ……この手は……』






『殴れよ……どうせ俺が引きさがってれば…俺が付き合えたのに、とか思ってんだろう…?』








『もう殴りませんよ、俺は。
 この手は大切な人を守るためにあるから。
 
 さっき殴ったのはいつまでも沙羅に執着して困らせてたからで、そのことについては先輩が二度と沙羅を困らせないって約束してもらえれば、俺は何もしません』







『……なんだよ……そんなに清々しい顔をして言いやがって……。
 沙羅に選ばれたお前なんかに大切な女を奪われた俺の気持ちなんて分かる訳がないだろ!』




高瀬は悔しそうな顔をして言う、が、海は先輩と同じ高さになるべく膝を床について、先輩の手を取り、引っ張って立たせた。







『分かりますよ。
 でも先輩はたったの一回でしょ?

 俺は沙羅があなたを選んだ時、結婚を考えていた人も兄貴に奪われましたし…。

 だから、痛いくらいにあなたの気持ちが分かります。

 でも、だからと言って相手を困らせるのは違いますよ、大事な人だからこそ、相手の幸せを願いましょうよ?』







海はそう言って、高瀬に微笑んだー…






『俺も苦しいけど、お互いに頑張って願えるだけの器の大きい男になりましょうよ』








そう言った時の海は、同じ男でもドキッとさせられるくらいに輝いていて、本当に器の大きい男だと思ったー…




















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