ごめん、好きすぎて無理。
『紗奈ちゃん、ごめんなさい…。
大事な彼の頬に傷をつけてしまって…』
高木さんは紗奈にそう言うと、紗奈はニコニコと微笑んでいた。
『いいえ、そんなことより陸から聞きましたよ、さっきのこと!』
おいおい…。
俺の傷に関しての謝罪に、“いいえ”の三文字すか?
てか…“そんなこと”と言いました?
俺、ちゃんとこの人に思われてるんだよな?
少しだけ心配になる気持ちを抑え、俺も作り笑いを浮かべる。
『………あ、うん……』
『沙羅さん、もうきちんと一番大切な人に、自分の気持ちを伝えたんですか?』
紗奈の言葉に高木さんはぎこちない表情を浮かべる。
『沙羅さん』
紗奈はもう一度、高木さんの名前を呼んだ。
高木さんは何かを決心したのか、一度頷いてから、海の方に体ごと向けた。