ごめん、好きすぎて無理。





『……さっきは恭二君のこと、ありがとう…』




高木さんがそう言うと、海は素っ気なく“あーうん”と返した。







『あ…あのね……。
 海と紗奈ちゃんのこと、紗奈ちゃんから聞いて…それで…。
 それでって言う訳じゃないんだけど…えっと……あの……』




緊張のせいか、高木さんの顔は段々に強張っていき、そして度を行き過ぎたのか今度は泣きそうな顔になっていく。










『沙羅、約束、覚えてる?

 “もう一度だけ、出会うことが出来たのなら、その時は沙羅を幸せにする”ってやつ…』





海は優しく、高木さんに問いかける。



高木さんは海の言葉に、ユックリと首を縦に振った。








『あの約束、忘れた日はない、それは確か。
 でも、一度沙羅じゃない人を心にいれたのも事実なんだ。

 今すぐにその約束を果たす、それは俺自身にとっても、沙羅にとっても、紗奈にとっても軽い想いになっちゃいそうで出来ない。

 けど、沙羅の存在はやっぱり俺にとって大事な存在だってこと、高瀬先輩に教えてもらった気がする。

 だから、もう少しだけ、待っててもらえないかな…?
 その約束を二人で叶えるのに、あともう少しだけ、心の整理をつける時間を俺にください』







海はそう言って、頭を深々と下げた。







『…………今までも待ったんだもん。
 もう少し、海の気持ちの整理がつくまで、私、待ってるね』





高木さんは涙を零しながら、でもそう言って微笑んだんだー…

















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