ごめん、好きすぎて無理。
それからは出産の時の話、海と高木さんの話やらで盛り上がった。
でも、その横で紗奈が時折お腹に手を当てて少し苦しそうな顔を見せる時があって、それは段々にその間隔が短くなってきたような…
『紗奈、お腹痛い?』
俺がそう問いかけると、紗奈はちょうど痛みが走ったのか目を瞑りながら、首を縦に振ることで返事をしてきた。
『………ごめ……』
紗奈はそう言うと、その場に横になり、お腹を抱え始めた。
え……
何々…
俺も海も、親父も紗奈のお父さんも、男連中は全員あたふたし始めた。
『紗奈ちゃん、さっきからお腹が痛む?
痛かったり、痛くなかったりしてる?』
高木さんが紗奈のお腹に触れながら、そう紗奈に問いかける。
紗奈は首を苦しそうに縦に振り、高木さんに返事をする。
『陸君、時計貸して!』
高木さんに言われ、俺は寝室から目覚まし時計を持ってきて、高木さんに渡した。
『紗奈ちゃん、入院グッズ、用意してあるよね?』
高木さんの言葉に紗奈はお腹を丸めて、“はい”と苦しそうに返事をした。
『陸君、落ち着いてね?
紗奈ちゃん、多分陣痛が始まってると思う。
もしかしたら破水とかもあるかもしれないからバスタオルを何枚か持ってきてくれる?
それから車の後部座席にもバスタオルを引いてきて、それから紗奈ちゃんの入院グッズも車に運んでおいて!』
それからは俺はあたふたしながらも、高木さんの冷静かつ的確な指示通りに体を動かした。