ごめん、好きすぎて無理。
『じゃ、ちょっと赤ちゃん綺麗にしてくるからね』
助産師さんはそう言って、奥の部屋に入っていって、産まれたてのその赤ちゃんの体を綺麗に拭いてくれた。
『…………陸…………やっと、会えたよ………』
全ての力を振りしぼって疲れているはずなのに、紗奈はその目からいくつもの涙を流していた。
『………会えたな…紗奈……』
紗奈は俺の言葉に、俺の方に顔を向ける。
『やだ……陸、何…泣いてんの……?』
紗奈だって泣いてるくせに、でも紗奈はクスッと笑って、そう言った。
『………そりゃ泣くわ。
あんな小さいのに……あの大きい泣き声なんか聞いたらさ……』
『……そうだね……すごい力強い泣き方だったね……』
『紗奈………ありがとう……。
お前には何度“ありがとう”を言っても足りねーな……。
本当に、ありがとう……』
『………陸…。
私は何もしてないよ……』
『紗奈はたくさんしてくれたよ…。
俺と出会って、俺と恋をしてくれた。
どんなに傷つけてもそれでも変わらず愛してくれた。
あんなに辛そうな顔をして……それでもあんな立派な子を産んでくれた……。
アイツにも会わせてくれて……本当にありがとう……』