ごめん、好きすぎて無理。





俺の言葉に紗奈は、“幸せだな”、そう言ったー…







いや、本当に幸せなのは俺の方だよ。





お前と出会って、お前と泣きながらも、悩みながらも恋をして良かったー…




そのお陰で、今の幸せがあるー…









『ほーら、ママとパパですよー』



そう言って、さっきの助産師さんが赤ちゃんを抱いて、俺たちのところに戻ってきた。







『はい、パパ。
 抱っこしてみて?』



そう言われ、広げた手の中にすっぽり収まる、その小さい体。


ぎこちない抱き方なのに、それでも俺の腕の中で必死に泣いていた。





まるで、“私、産まれたんだよ”、そう言わんばかりにー…










その後、紗奈が個室に移動するのに併せて、俺らもそっちの部屋に移動する。



ここは母子同室のため、赤ちゃんも紗奈の部屋にやってきた。







小さなベッドの上で、しっかりその小さい目を開けて、不思議そうに俺らを見つめている。









『いやー…本当に可愛いな、天使みたいだな、この子は』



親父がそう言うと、紗奈はクスッと笑った。






『……紗奈ちゃん。
 本当にこのバカ息子、陸にこんな可愛い子の父親にさせてくれてありがとう…。

 俺の人生に孫と会える時を、本当に、本当にありがとう……』




普段なら泣かない親父も、一度だって親父が泣いてる姿なんて見たこともなかったのに、それでも今の親父はいくつもの涙を流していた。





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