ごめん、好きすぎて無理。
“紗奈のこと、絶対に俺から取らないでね”
『何言ってんの…?
海のものを取る趣味、俺ないけど…』
俺の言葉に、海は怖いくらいの笑みで俺を見つめる。
『陸にその気がなくても相手は違うかもしれない、でしょ?』
一瞬、身震いしそうになったー…
海、お前…なんか知ってる…?
海にそう聞けば一発。
湧いて出た疑問なんて一瞬で解決する。
でも、海にそんなこと、聞けない。
『俺が好きになる女はいつも陸を好きになるから』
そう、海から発せられる言葉に、俺は怯えながらも海に視線を向けた。
『……なんーてな。
紗奈とは結婚前提の付き合いだし、陸とどうにかなるなんて考えられないけど。
てか、陸、顔色悪いよ?』
…顔色悪くなって当たり前だっつーの…
海のその言葉に、海のその視線に、海、いや弟を怖いと思ったこと、今日が初めてだよ。
『じゃ、陸、今晩は予定、あけといてね』
海はそれだけ言って、俺の部屋のドアをしめ、廊下を歩いて行った。
海のその足音を聞き、俺は鳴りやまない心臓を押さえ、もう一度ベッドに体を倒した。