ごめん、好きすぎて無理。
『また……会うのかよ………』
“会わないようにしよう”、そう決めたばかりだってのに。
でも今から海を追いかけて“無理”と言えば、海からの質問攻撃が始まる。
“なんで?”、そう海に言われたらなんて切り抜ければいいものか…
“紗奈に会いたくない”、そう答えたら、“なんで?”そう聞かれる。
“まさかの元カノです”なんて、海に言える気がしない…
『……………………最悪だ…』
その言葉を言い終わると同時に携帯が鳴り響く。
そっと携帯を取り、着信の相手を確認すると、そこには“大地”と表示されている。
『………もしもし?』
正直、今は誰とも話したい気分ではないものの、俺は大地からの着信に出た。
『陸、その声、寝起き?』
『あー……ちょっと前には起きた』
『あっそ、それにしてはだいぶ声のトーンが落ちてんな』
大地にさえ見破られる、それほど俺の声は落ちてんのかよ…。
『…なんかあったのか?』
電話の向こうの大地は優しく、俺にそう問いかける。
大地とは幼馴染、そして俺と同じ高校に行っていて、俺と紗奈の関係も知っている奴。
『あんさー…大地、今日の夜、暇?』
俺はどうしても三人の飲み会を阻止したく、大地にそう尋ねた。
『暇』
たった一言の返事、されどこのたった一言の言葉が今の俺にとってどれだけ救いの言葉になるか…
『…だから、俺も海の彼女お披露目に参加させてもらうわ!』
……おいおい。
その救いの言葉を信じて上がった俺のこの気持ちをどうしてくれるつもりだよ…
『今晩、海のすっげー綺麗な彼女、来るんだろ?
俺も海から招待されてよー、すっげー楽しみだわ』
海、手を回すの、早くない?
そんなに俺に、この飲み会に参加しろ、ってことなのか?
『じゃ、7時にな♪』
そう大地は言って、一方的に通話を切ってしまった。
プープープー
虚しくも俺の耳に聞こえてくる、その音…
『……なんでこうなんだよ……まじで…』
俺は自室にただ一人、携帯を握りしめながら、そう呟いた。