ごめん、好きすぎて無理。
『…てかさ、俺、来ない方が良かったのかも……』
大地は神妙な面持ちでそう言うから、俺は眉を顰める。
『どういう意味?』
俺の言葉に大地は手に持っていた一冊のアルバムを俺に見せる。
『……卒アル?』
大地が手に持っていたのは、俺たち高校の時の卒アル。
『いや、朝、海から連絡もらったときに高校の時のアルバムを持ってきてほしいって頼まれたんだよ。
なんでも飲み会の時の話題に、お前が高校の時に付き合った女との感動の秘話を彼女に教えたいから、とか言って…』
感動秘話…?
あんなの感動でもなんでもない。
いや、注目すべき点はそこじゃない…
もし、俺の感動秘話を話したいなら、最初から俺に卒アルを見せてほしい、そう言えばいいはず。
でも、海は俺じゃなくて、大地に頼んだー…。
このことが気になる。
『てかさ…この卒アルを見たら、普通に俺と笹本が同じ高校の出身だってバレるよな?
さっきの“はじめまして”の挨拶をおかしく思うんじゃね?』
『俺も紗奈とは初めて会いました、っていう会話を昨日してるから』
『おいおい…でも卒アル見せた瞬間にバレるぜ?
どう言い訳すんだよ?』
俺も内心、どう言い訳しようか、そう考えた。
大地より、きっと考えた。
でも、一度ついてしまった嘘は、一度知らない振りをしたからには、それを通すしかない。
『卒アルは忘れた、とか言って誤魔化せ。
昨日、紗奈が俺のことを初めて会った、そういうことにしたんだ。
それは海にとっても、自分にとってもそれが一番いいこと、そう判断したからだ。
だから、無理に俺たちが教えることねーよ…』
俺の言葉に大地は頷いた。
俺は大地から卒アルを受け取り、静かに階段を上る。
『大地、先にリビング行ってろ』
俺の言葉に大地は神妙な顔をし、そして一度頷いて、リビングの方へと歩いていく。
俺はそのまま階段を上り、自分の部屋の本棚にその卒アルを入れた。