ごめん、好きすぎて無理。
『日向ぼっこしてる訳でもなく、ベンチに腰掛けて、ボーっとして、なんか来ない相手を待ってる、直感でそう思ったんだ』
続く海の言葉に、海と紗奈が出会ったという公園の名前を思い出した。
確か海と紗奈が出会った公園の名前は“大峰公園”…
大峰公園ー…
記憶を辿り、辿り着いた記憶の片隅にある公園の名前ー…
『え、笹本さん、その時、誰かを待ってたんすか?』
大地が悪気もなく紗奈に問いかける。
問いかけられた紗奈は、ほんの数秒、俺を見つめる。
視線を反らしたかと思えば、その口を開いた。
『私をフッた人のこと。
彼が“やっぱりやり直そう”、そう言ってくれるのをずっと待ってたの、あの場所で』
紗奈は海の前で、あっさりとそう言った。
大地は紗奈の言葉に海を見つめる、まるでそれは“海はこの話を知ってんの?”とでも言うかのように。
『俺、間違えられたの、紗奈の待ってた人に!』
でも海は何事もないように笑って、そう大地に言った。
『間違えられた…?』
『あんまりにも待ち過ぎてたからかな?
声をかけてくれた海君が一瞬その人に重なって見えちゃって。
思わず、“待ってたんだよ”って海君に言っちゃったの、私』