ごめん、好きすぎて無理。
『海、お前ってすっげー笹本さんのこと、好きなんだな…。
なんかこう、言葉から伝わってくるよ、な、陸?』
大地は本当に海の想いの深さを知って感動でもしたんんだろう。
すっげーいい表情を見せながら、そう俺に同意を求めてくる。
『…あ、あぁ、そうだな…』
俺は大地の言葉にそう答えると、紗奈の方に視線を向ける。
どうにか、紗奈の想いを、紗奈の心まるごと全部海の方に向けなければ…
そんなことを考えている俺を余所に、俺以外の酒を飲むスピードが速くなる。
そこから二時間もしないうちに、全員テーブルに突っ伏す形で寝ていた。
ふと寒気を感じ、重たい体を起こすと、俺以外の奴は皆テーブルに突っ伏して寝ている。
海の隣、海に寄り添う形でテーブルに突っ伏してる紗奈、その姿を見て、俺は再び考え始めた。
どうしたら、紗奈は俺を諦める?
どうしたら、海と同じくらいに、紗奈は海を想うようになる?
何度疑問を頭に浮かべたところで、ない頭を俺が捻ったところで解決策が思い浮かぶ訳じゃない…
その場にいても何も思い浮かばない俺は静かに立ちあがり、部屋を出ていく。
完全に一人になったことを確認し、俺は廊下の壁にもたれかかる。
『………マジ、めんどくせー……
てか、なんで紗奈は海じゃないんだよ…
最初から海と出会って、海と』
そこまで言いかけたところで、俺は人の気配を感じた。
『無理よ、私は海君じゃダメなの』
声の主を確認しなくても、その言葉だけで分かる。
だから、俺は振り返れなかったー…