ごめん、好きすぎて無理。
『あ、わりぃ、俺コンビニ行って、つまみでも買ってくるわ!』
それは、神様にさえ無視をされた俺の逃げの台詞。
一口しか飲めていないビールをキッチンのシンク横に置き、リビングを後にする。
リビングから廊下に出たところで、海の彼女が言葉を発する。
『あ、海君、ごめんねー。
今、会社の先輩から連絡入って、今から先輩の失恋パーティーに強制参加だって…』
『えーそうなの?
なんか女の世界って付き合いが大変なんだな。
ご苦労さま、今、駅まで送ってくよ?』
海の言葉の後、二人の足音が玄関に向かって聞こえてくる。
先に玄関に辿り着いた俺は急いで靴を履き、玄関の扉を開けようと手を伸ばした、その時、
『大丈夫。
お兄さんがコンビニまで行くのに教えてもらうから』
海の彼女は、そう言ったー…。
それはまるで玄関にいる俺にもわざと聞こえるように、そんな感じがした。
咄嗟に俺の手は胴体の横に戻る。
何、言ってくれてんですか、俺は心の中で問いかける。
でも、
『マジでー?
まぁ…紗奈と陸、仲良くなってもらわないとだしな!
これから義理の兄妹になるかもしれないんだし』
海は普通に、そう、答えた。
いやいや…海君?
普通に、彼氏のお前が送って?
てか、義理の兄妹って何?
普通に聞いてて、それはただのプロポーズにしか聞こえないっていうか…
『え…、それって海君、どういう意味?』
『うん、そういう意味』
そんな二人のやり取りが聞こえてきて、海のその言葉の後に沈黙が流れる。
そして、ほんの数分後、
『海君、玄関にお兄さんいるよ?』
『兄貴だって子供じゃないよ?
付き合ってる二人ならキスくらいする仲だって理解してるよ』
そう、海が答えた。