ごめん、好きすぎて無理。
『…………紗奈…』
突然のことだったからか、
それとも意表を突かれたからか。
俺はその名を口にする。
『陸、どうしても私を好きにならないなら、
私のお願いを聞いて?』
背中に伝わる、紗奈の熱。
生身の人間の温かさ、なんてものじゃない。
怒ってるのか、怨みのある思いがそうさせてるのか、紗奈から伝わる熱はとても熱く感じた。
『…なにそれ。
お願いなんて聞くつもりない。
むしろもう俺に関わんなよ』
『陸が…
陸が私のお願いを聞いてくれたら、
全部叶えてくれたら、
そしたら海君とずっと一緒にいてもいい…』
なんだよ、それ……
海とは一緒にいてほしい、けど。
その交換条件は何?
『紗奈、ふざけてんの?
お前は海の彼女、お願いなんて海に言えよ』
でも、俺の言葉に紗奈は俺の背後を抱きしめる腕の力を強めた。
『だめ、海君じゃなくて陸じゃなきゃダメ!
陸、私のこと嫌なんでしょ?
私のことなんて嫌い、ウザいんでしょ?
だったら、私のお願いを聞いてよ…。
そうしたら私は二度と陸の前に現れないから…』
俺は紗奈が回している腕を掴み、無理矢理その腕を引き剥がす。
『……お前のお願いってなんだよ?』