ごめん、好きすぎて無理。
『ね、陸?
今日は陸はお兄さんでも元彼でもないよね?
今日は私の彼氏だよね…?』
紗奈の言葉、語尾の方は本気で俺に問いかけているようだった。
『……今日だけな』
俺がそう答えると、紗奈は薄く笑った。
『陸、手、繋いでもいい?』
紗奈は今にも泣きそうな顔で、震えた声で、そう問いかけてくる。
『嫌、そう言ったら繋がなくてもいい?』
『…え!』
紗奈は勢いよく、顔を上げて、俺に視線を向ける。
『お前さ…
ここ、俺んちから近いんだけど。
海に見られたら、どう言い訳すんの?』
『言い訳なんかしないよ?
陸を好きな気持ちに正直に動いただけ、だから海君に見られても言い訳なんかしない』
どうして、紗奈はこんなに真っ直ぐに俺を好きだって言うんだろう…
なんで俺にこんなにも“好き”と言ってくるんだろう…
なんで海に…
でも、もし紗奈は海に真っ直ぐ“好き”だと言って、それを聞いた俺は、その光景を見た俺はなんて思うんだろうか…
純粋に、“おめでとう”と言えるのだろうか…
いや、言う!
海が幸せになってくれたら、兄貴としてすげー嬉しいことだし…
それに、あんなにも真っ直ぐ紗奈を想っている海だ、だから海だってその分の見返りを期待しても間違いじゃない…