ごめん、好きすぎて無理。
『陸、それは出来ないや…』
『…頼む、海と向き合ってやれよ』
『じゃ…陸はまた私に演じさせるの?
海君を好きな女の子、そう演じさせる?
海君とこのまま結婚して、子どもを産んで、何もなかったように海君の隣で、必死に笑い続けてればいい…?』
紗奈のその言葉に、俺は何も言えなかったー…
『陸、たった一度だけの人生なんだよ?
たった一度の人生、陸以外の人には非難されるかもしれない…
陸以外の人は私から離れていくかもしれない、最低な女だって…
でもね…?
他の誰を失ってもいい、沢山の人に背中を向けられても、それでも私は陸を好きでいたいの。
陸と一緒にいたいの…だから、早く陸も私を好きになってよ…?』
『……紗奈、俺はもうお前を傷つけたくない…』
『……え……?』
俺が紗奈の手を離した理由ー…
それは紗奈の手を離さなければ、紗奈が前を向けなくなる、そう思ったからで。
だから、俺といることがお前を幸せにできることとは思えないー…
『お前は忘れたの?
俺と昔、何があったか……』
あの頃のように触れられる距離に紗奈はいるのに、それでもあの頃以上に紗奈の存在は遠い…