ごめん、好きすぎて無理。
『ちょっと…いい…?』
紗奈は苦しそうな顔をしながら、それでも廊下の方へと出ていく。
俺は静かに、その後を追った。
人気のない、廊下の端まで来ると、紗奈はユックリ振り向く。
その顔はもう涙が溢れだしていて、ただ事ではない、そう思った。
『……紗奈?』
俺が紗奈の名を呼ぶと、紗奈は俺の目を見つめる。
『………陸、
陸は、私のこと…好き、だよね…?』
なんで、こんな質問をするのか…
俺は紗奈が好きで、紗奈も俺のことを好きだと言ってくれた、だから俺たちは心だけじゃなく体でも一つに……
『……紗奈、俺はお前のことが好きだよ…?』
でも、俺の言葉に紗奈は不安の中にも一筋の希望を見つけたかのような顔を見せてくる。
『……どんな私、でも…?』
“どんな私でも”の問いかけに、俺は息を呑んだ。
紗奈、もしかして…
その“どんな私でも”は、俺の予想を正解だと言いたいの?
俺の予想通りなの?
でも、俺、その予想通りの答えなら…
『……冗談だよ、陸』
紗奈はそう言って微笑んだ。
“冗談”、それは俺の予想が不正解だった、そういうこと?
俺は紗奈の微笑みに、“不正解です”の言葉が欲しくて、紗奈を見つめる。
『ね、陸…?
私、陸のことが好き…大好きだよ?
だから、私、陸と別れようと思うんだ…』
その言葉は。
その言葉は俺が予想していなかった言葉で、
紗奈から言われる日が来るなんて思ってもいなかった言葉で、
俺は一瞬戸惑う。
『…………な、んで?』