ごめん、好きすぎて無理。
『陸が好き。
陸が好きだから、そうしたいの』
紗奈は相変わらず微笑みながら、そう言うけど。
でも、俺は紗奈のその微笑みの理由が分からない…
『紗奈、お前さ…
俺に何か言うこと、ないの…?』
俺はなんでこんなことを聞いたんだろう…。
紗奈が“冗談だよ”と言ってくれたのに。
紗奈がこんなにも優しく微笑んでくれているのに。
もし、紗奈が俺の予想通り、そう答えたらどうしていいか分からないくせに。
きっと、そんな俺の不安が紗奈に伝わってしまったのだろう…
紗奈は俺の顔を見て、俺の言葉を聞いて、それでも笑ったんだー…
『陸が好き、陸に言いたいこと、私にはそれしかないよ?』
『……なら、なんでお前が俺から離れようとすんの…?』
『陸の足枷だけにはなりたくない』
紗奈のその言葉は、いや紗奈のその言葉に俺は確信したー…
俺の予想通り、だとー…
『足枷って何…?
突然好きだから別れよう…とか意味分かんない…
納得いかねーんだけど!』
気がつけば、俺は紗奈のその細い腕を引き寄せていた。
腕の中にいる紗奈は意志のない人形のように、ただ、ただ俺に抱きしめられているかのようだった。
『紗奈…
俺のことが好きなら、離れんなよ……頼むから……』
予想通りだとハッキリ宣告されるのは怖かった、どう受け止めればいいか、この先どうしていけばいいか分からなかったー…
けど、その中でも一つだけ言えること、
今、俺の腕の中にいる紗奈は、きっと俺なんかよりずっと怖くて、不安で、きっと一人で沢山泣いてて…
だから、俺はその紗奈の手を離してはいけない、そう思ったー…
その気持ちに、嘘はなかったー…