ごめん、好きすぎて無理。





『………お願いします…。
 紗奈さんのいる病院を教えてください……』




何度も何度も、電話越しで紗奈のお父さんに頼んだ。






『例え…娘が君を許しても、君の傍にいたいと願っても、それでも私は君と紗奈を二度と会わせない、それだけだ』




紗奈のお父さんはそれだけ言って、電話を切ってしまったー…






かけ直しても電話を取ってもらえることもできない…




紗奈が一番痛い思いをしてる時に、俺は傍にもいてやれない…


紗奈の手を握りしめることも出来ない…





紗奈の安否さえ知ることさえできない…







『…………………紗奈………』





愛しい人の名前を呼んでも、その人からの返事がある訳でもない。




それでも、今一番失いたくない人の名前を呼び続けた。






『………紗奈………』





『………紗奈……』






紗奈の名前を呼び続けているうちに、紗奈と過ごした日々が走馬灯のように流れては消え…




紗奈の笑った顔、

紗奈の怒った顔、

紗奈の苦しそうな顔、

紗奈の泣いた顔、

紗奈の不安そうな顔、

紗奈の困ったように微笑む顔、

紗奈の喜んだ顔、


いくつもの紗奈が浮かんで、本当に大事な女の子だった、そう思ったー…





二人で話したこと、

二人で言い合ったこと、

二人で抱き合ったこと、

二人で笑い合ったこと、

二人で想いをぶつけ合ったこと、


全部覚えているのに、全部心に残っているのに、それでも俺は紗奈を失うというのか…






無理だと思ったー…


紗奈のいない日々を過ごすのは、

紗奈のいない時間を生きていくのは、


俺には無理だと思ったー…



紗奈のこと、本気すぎて、紗奈を失うこと、俺には無理ー…








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