ごめん、好きすぎて無理。
どうしても失いたくなかった。
どうしても引き離されたくなかった。
どうしても紗奈の傍に居たくて…
俺は繋がらない携帯を握りしめて、近場の病院から一つ一つ回った。
紗奈のお父さん、お母さん。
確かに俺のせいで紗奈が危ない目に合ったかもしれない…
俺のせいで、紗奈を、お腹の子を…
でも、紗奈だけは失いたくない、失いたくないんです。
俺から紗奈を遠ざけないでください。
その為なら、何度でも土下座する。
何度でも、何回でも頭を下げる。
分かってもらうまで、認めてもらうまで、何度だってするから、
だから、お願いします…
どうか、紗奈の傍にいさせてください…
どうか、俺から紗奈を遠ざけないでください…
その想いで、一つ一つ回った、回り始めて10件目の時、俺の携帯が鳴った。
着信だった、しかも相手は紗奈…
『……もしもし!』
俺は急いで通話を押し、相手にそう言った。
『………娘の手術は成功したよ。
お腹の子は……残念だったけど、紗奈はなんとか大丈夫だ。
一応、紗奈の安否だけは君にも伝えておこうと思って連絡したが、病院については教えることは出来ない。
それから、私の方から君とは別れること、そのことについて紗奈には話しておくから、君も娘とは金輪際接触することもないよう、君に言っておく…』
待てよ……
待てよ……
俺は紗奈の安否を知るためだけに病院を探してるわけじゃない!
俺は紗奈の傍に居たくて、紗奈を失いたくなくて…
『……病院を教えてください。
俺の責任だということ、それは分かってます……
でも、俺は紗奈さんを失いたくない、傍にいたいんです!
だから……』
『……君に何が出来る?』
『……え……?』