ごめん、好きすぎて無理。
『………俺は、最低だよ…。
結局、紗奈を離したくなくても、それでも今の紗奈にどうしていいか分からないんだ…。
なんて声をかけて、どう目を合わせればいいか分からない…紗奈が何を望んでるのかさえ分からない……
いっそうの事、紗奈が俺を突き放してくれれば……そう、思えてならないんだ…』
案の定、大地は俺の言葉に首を傾げている。
でも、俺は目に映る紗奈を見ないように、目で追わないように、目を堅くつぶった。
『お前らさ…なんかあった…?』
大地のその言葉に、大地に話したい、俺の気持ちに共感してほしい、俺に紗奈の手を離さないで済む方法を教えてほしいー…
そう切実に思うのに、願うのに。
それでも大地は他人、他人なんだと思った。
これはその時の立場になった奴にしか共感できない思いで、同じ経験をした奴にしかその方法は分からないー…
『最初から何もなければ良かったんだ…。
俺が紗奈を好きにならなければ、紗奈を傷つけることなんてなかった…。
俺が紗奈を好きになりすぎた、だから紗奈は……』
手を離したくない、そう思ったはずなのに。
出会わなければ良かった、好きになんかならなければ良かった。
ずっと、ずっと他人のままで、そのまま卒業をすれば良かった。
そう、思ってしまう俺は男として、彼氏として最低なんだろう。
それでも俺は紗奈が好き、好きだから、紗奈の傍にいられない…
その思いが勝ってしまったー…
『……陸?』
『俺、紗奈と別れるよ…』
紗奈にはもう二度と悲しい顔も、苦しい顔も、泣く顔をさせたくないから…
だから、紗奈が俺のことを忘れてくれるように、紗奈の手を離すー…