ごめん、好きすぎて無理。
電車が来ると、紗奈は電車に乗り込んでいく。
俺もその後を追って、車内に乗り込む。
『陸、今からね…
約束の場所に行こうと思うんだ、二人で…』
紗奈は流れる景色を窓から見つめながら、そうポツリと言った。
『…約束の場所…?』
俺は紗奈に問い返すも、紗奈の行きたい場所におおよその検討がついた。
『陸は忘れちゃったか…。
まだ付き合ってた頃、赤ちゃんが産まれたら一緒に行こうねって話してた場所だよ』
紗奈と、産まれてきた子と、俺の三人で絶対に行こう、そう話していた場所…
しばらく車内に揺られていると、窓から見えてくる、その約束の場所ー…
『陸、もう降りるよ?』
『……あぁ』
紗奈のその言葉に、その場所で正解だったこと、あんなに前に約束した場所にも関わらず覚えていたこと、俺は本当に記憶力がいい。
…いや、紗奈と約束した場所、だからか。