ごめん、好きすぎて無理。
『………陸。
もう一回だけ、陸に言わせて……』
『………陸、私、陸のことが好き…なの。
陸は……?』
『俺は……紗奈のこと……好き、だった…。
過去形の想いしか、俺にはない……』
なら、どうして俺は紗奈を抱きしめてるんだろう…。
なら、どうして俺はこんなにも紗奈を離せないでいるのだろう…。
『…………陸、二つ目のお願い、聞いて…?』
『………何?』
震えた声を絞って、紗奈が言うから伝染したんだ、俺も。
戸惑いつつ聞き返した言葉に紗奈は俺を抱きしめる力を強める。
一呼吸あって、紗奈は再び口を開いた。
『陸、最後に一回だけでいい…。
だから私に触れて…?
もう一度、私を抱いて…?』
俺は紗奈の言葉に紗奈を引き剥がす。
そして今度は紗奈の肩に手を置き、紗奈を見つめる。
もう溢れだしている涙、それでも紗奈も真剣な顔で俺を見つめていて。
『……お前、何言ってんの……?
自分で言ってることの意味、分かってんの……?』
俺は紗奈に聞き返す。
でも紗奈は首を縦に一度だけ深く動かした。
『………俺とお前は…もうそういうことしちゃダメなんだよ……。
俺とお前は……それで一度失敗してるんだぞ?
‥海を……俺に裏切れって言うのかよ……?』
『失敗なんかじゃない!
陸が好き、陸も私が好き……だからあれは失敗なんかじゃない!
……神様が二人はずっと一緒にいなさい、そう言ってくれたんだよ…。
だから二人の想いの証に神様が私のお腹に赤ちゃんを連れてきてくれたの…!』
紗奈は首を何度も横に振って、叫ぶと同じくらいの声量でそう言ったー…