ごめん、好きすぎて無理。
『………陸、お願い…。
私にもう一度、陸に愛された、その事実が欲しいの……』
切実な顔をされて、懇願されてもそういう訳にはいかない…。
『……俺は、もう二度とお前に触れない……!
もう二度と、お前を傷つけたくないんだよ!
心も身体も……もう二度と……』
俺は力なく、紗奈の肩に置いていた手を腕、そして手へと下降させていく。
紗奈の指を通り越し、俺の手は俺の胴体の横に戻る。
『………陸、陸がこのお願いを聞いてくれなきゃ、私は陸を忘れない、ずっと陸の前に現れ続ける、好きだって言い続ける…!』
紗奈の言葉に、俺は更に力をなくし、砂浜の上に膝がストンと落ちて、その場に正座するかのように座り込んだ。
『陸、海君をこれ以上裏切りたくないでしょ?
海君を騙して、海君を傷つけたくないでしょ?』
傷つけたくない…
傷つけたくないよ…
だって、海はたった一人の俺の兄弟だからー…
『でも……お前を抱くことは海への最大の裏切りだ……』
『最大の裏切りは身体で繋がることじゃない……。
心で繋がること、だよ?
陸が抱いてくれたら……私は海君を好きになる…。
本当に、絶対に、海君を陸以上に好きになってみせるよ…?
だから……お願い、お願いだよ……陸………』
そんなお願いをされても、俺は………
そんな俺を余所に、紗奈は羽織っていた上着のポケットから小さい箱を引っ張りだした。