ごめん、好きすぎて無理。





『……陸、これ、見て?』




紗奈はそう言うなり、その小さい箱を開ける。



小さい箱を見ただけで中身がなんなのかすぐに想像つく、でも紗奈が開けた箱にはダイヤモンドが美しく輝く真新しい指輪が入っていて、俺は一瞬で悟るー…







『……海からもらったのか…?』





俺の言葉に、紗奈は箱から指輪を取り出す。


そしてその指輪を親指と人差し指で挟み、紗奈は波打ち際まで歩いていく。








『陸、陸が私のお願いを聞いてくれないなら、今すぐこの指輪を海に捨てる。

 もし陸が私のお願いを聞いてくれるなら、私はこの指輪を今ここで左手につける。

 私にどうしてほしい……?』




紗奈はそのまま後ろ向きのまま、押し寄せる波の中に入っていく。









『………紗奈……』





『…………陸、どうするの?』





俺が悩んでる間にも紗奈はどんどん海の中に入っていき、すでに紗奈の太もも辺りまでが海に浸かっている状態で。







『簡単でしょ?
 海君には黙ってればいいんだよ?

 私は海君を愛して、海君も私を愛して、私たちは結婚する…。

 陸は大嫌いな私から解放されて、新しい恋をみつければいい…。

 こんな簡単な問いかけに、どうしてすぐに答えてくれないの?』







そして紗奈は指輪を持っている方の手を突き出した。






『………紗奈、これ以上、海を利用すんな………頼むよ、俺に海を裏切らせないでくれ……』







『それなら、陸が私を抱けばいい、それだけだよ?』







紗奈の手にある指輪が、太陽の光に照らされて、一際輝いて見えた時、俺は一粒の涙を流したー…














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