ごめん、好きすぎて無理。





『……別れたんだ。

 俺が彼女の手を離した…』






俺のその言葉に、海は頭を抱える。





『え………責任とって結婚とか………』



『海、俺は人を幸せにする資格なんて持ち合わせてないんだ。
 だから、海は、海はあの彼女を沢山幸せにしてやってな?』








俺が出来なかったこと。


きっと、海なら出来るから。




俺が紗奈を不幸にしてしまった分、

海が紗奈を一番の幸せ者にしてやってくれ。






弟に、いや他人に、自分の好きだった女の幸せを託すとか、笑えるけど。



でも、海なら絶対に、紗奈を幸せに出来る、紗奈を幸せにしてやれるー…





だから、海、頼む。



紗奈を、世界で一番、幸せな女にしてー…











『……陸、その元カノのこと、今は…?』








『嫌いで別れた訳じゃないから…。
 すっげー好きだった、だからもう二度と傷つけたくなくて別れたから…』








『……今でも好き、なんだな…』




海の言葉に、俺は自問自答をする。




俺は紗奈のこと、今でも好き、なのか…。










『………けど、もう結婚が決まってんだ。
 俺なんかより、すっげーいい男なんだって、相手!

 だから…俺はそいつが今度こそ幸せになってくれるように願うだけだよ』









海は何も答えなかったー…



初めて知る、自分の兄貴の過去。


初めて知る、本当の俺のこと。




きっといろんな思いがあって、いろんな動揺で心が処理するのに時間がかかってるんだろう…。









『………陸は、それで諦められんのか?』






海のその言葉は、俺の胸を一突きする。





でも、紗奈が選んだのは、お前だからー…




他の全く知らない奴よりも、海のことは一番知っていて。


誰よりも信頼出来る相手だから、男だと思えるからー…









『俺は彼女が幸せなら、それでいい』







でも、海は満足いってない様子で。






『そういうのを好きって言うんだよ、陸!
 幸せを願う相手こそ、本当に好きな奴なんだよ』




そう、言ったー…














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