ごめん、好きすぎて無理。
『え……例えば?』
海は俺の問いかけに真面目な顔をして、俺に具体例を求めてくる。
海に言わなきゃ。
海に紗奈とのこと、話さなきゃ。
『……あー…うん……』
結納の日、海と紗奈の両親が会った時、絶対に紗奈の両親は海を俺だと間違える。
仮に紗奈が間に入って説明したとしても、紗奈の両親は俺そっくりな海に破談を言い渡すかもしれないし、そこまでいかなくても海の印象は悪くなるはず…
それに、そこで明かされる事実なら、
海にどうせバレてしまう事実なら、それなら他人から知らされる事実よりも俺の口から聞いた方が海だって…
でも、口が上手く開かないー…
『例えば……最初から海の印象を悪くさせるような……こととかがあって…とか』
『え、俺の印象?
俺、そんなに第一印象から悪く思われるような感じかな?』
海は俺の顔を見つめ、そう問いかける。
むしろ、君はどこからどう見ても好青年です、俺とは違って…
じゃなくて!
『海、じゃなくて……』
そこまで言いかけたところで、海の携帯がけたたましく鳴り響いた。
『あ、ごめん…』
海はすぐに携帯を取り出し、画面を見つめる。
『……知らない番号だ』
海はそう言って、通話に切り替え、耳元に携帯を持って行った。