ごめん、好きすぎて無理。
そこで紗奈のお父さんの言葉が止まった。
何故なら、目と鼻の先にある、多分紗奈がいるであろう病室が騒がしかったからだ。
『紗奈!紗奈!』
女の人の声…紗奈のお母さんの声が廊下まで響く。
紗奈のお父さんも慌てた様子で病室に入っていく。
俺もその後を追って、もう会わないと、紗奈のお父さんと約束したことを破り、俺は病室に入る。
『どうした!?』
『紗奈が目を覚まして……』
紗奈のお父さんはお母さんをどけて、ベッドに横たわっている紗奈を呼び掛けた。
その反対側には海の姿ー…
『………紗奈…?』
海がそう、名前を読んだ時、
紗奈がゆっくりと顔を海のいる方に向けた。
俺はゆっくりと、後ずさりをする。
『……………………………陸』
その声に、俺の心臓はドキッとして、そしてその場に立ち止まる。
でも、かろうじて俺の視界からも映る紗奈が海の方に顔を向けたまま、
『……陸……どうしたの………?』
そう、言ったー…
海の顔は段々に曇っていくー…
『………紗奈、俺は海、だよ…』
海が恐る恐るという感じの声でそう言うと、紗奈の顔が今度は曇った。
『……え、あ……海君…………?』
慌てて紗奈がそう言うも、海は紗奈の様子に顔を強張らせていく。
『…………あ、あのね…海君、今のは……』
『陸、どういうこと?』
海は紗奈の言葉を遮り、そして固まっている俺にそう問いかけてきた。
そして、その様子を見ていた、紗奈のお父さんとお母さんが俺達の顔を交互に見つめ、俺達のことに気がついた。