彼と私の事情
頭をぽんぽんして立川さんは家を出てった。

もちろん鍵は渡さずに。

「…仕方ないなぁ…。」

そう呟いたものの、久しぶりに感じるこの家。

家をぐるっと見回すと、

「何も変わってないのね。」

歯ブラシや食器。

変わらない場所に2人分。

私がいた頃と何も変わりがない。

それが嬉しくて、涙が出る。

やっぱり立川さんのことが好きなんだと認めるしかない。

彼と出会った日から、涙腺が緩くて仕方ない。

元カレがいなくなって、涙なんて枯れたと思ってたのに。

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