大人の恋はナチュラルがいい。
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長いブランクがあった割には今のところデートは順調、上出来の経過を辿ってるように思えた。昨夜はどうなるかと思ったけれど、マリナが外見の女子力をチートでアップしてくれたおかげで、なんだか中身や雰囲気まで乙女化してきた気がする。太一くんの積極的なアプローチもあって、今や私はうれしはずかしトキメキ乙女だ。29歳だけど。
観覧車で空の散歩を楽しんだ私たちは、次の目的地水族館に行く前に休憩を取ることにした。せっかく風が心地好いのでオープンカフェでお茶を飲む事にする。遊歩道を挟んで海が見えるテーブルに席を取ると「俺買って来るからヒヨコさん座ってて」と、太一くんが颯爽と店内に向かって行った。青いオックスフォードシャツを翻して背を向ける後姿を目で追いながら、若いのに気が利くなぁなどと年寄りじみた事をトキメキを交えながら思っていた時。
「あれ、ピヨちゃんじゃない?」
やたら可愛いあだ名で呼ばれ振り向けば、遊歩道からこちらへラブリーなしぐさで手を振りながら近付いてくるひとりの男が。
「ああ、薫くん。グーゼン」
「グーゼンだね~。なに、遊びに来てるの?」
「まあそんなとこ。薫くんは?珍しいじゃんスーツだなんて」
「僕は仕事~。公園のBGMの依頼でさ、これから打ち合わせ」
会話してる私たちを他の席に座ってる女の子たちがチラ見するもの無理はない。身長180センチ、ホリの深いイタリア人みたいな顔立ち、まるでモデルのような容姿のこの男は、【Apaiser】の近くの音楽会社で働く薫くん35歳。うちの常連さんだったんだけど、ほがらかな性格からすっかり友人になってしまった。