大人の恋はナチュラルがいい。

３・堕ちるナチュラル

【３・堕ちるナチュラル】



　初夏と言うに相応しい気候の続く5月下旬。新緑の光景もすっかり目に馴染んだこの頃、着実に平均温度を上げていく気候は湿気が混じり、少しずつ蒸し暑い季節へと移行しているなと肌で感じられた。

　食品を扱うには正直やっかいな季節でもある。今まで以上に食中毒には万全の注意を払わねばならない。けれど、そんな苦労も毎日美味しくランチを食べてくれるお客さんの顔を見れば吹き飛ぶと言うものだ。そう、特に――

「ヒヨコさん、チキンアボガドのランチボックスひとつ頂戴。あとサラダも」

　こんな“今日も美味しいランチのために午前の仕事頑張って来ました！”と書いてあるような笑顔が見られるなら、些細な苦労など無に等しい。カフェの店長になって良かったとさえ思ってしまう。

　太一くんは相変わらず毎日うちにランチボックスを買いに来てくれる。肉メニューのボックスにサラダが定番。時々アイスブレンドをテイクアウトでつける。ランチタイム時の私は、その日のシフトメンバーを見て店内を受け持ったり店外で売り子をしたりするんだけど、やっぱりダイレクトに太一くんの接客が出来る日は密かに心も弾んでしまう。

「いつもありがとう。でも、たまにはお魚も食べなくちゃダメだよ」

「分かってるんだけど、つい。今度は魚にする」

「それ、こないだも言ってた」

「あはは、バレた？」