大人の恋はナチュラルがいい。
「店長さんが素敵な人だからに決まってるじゃないですか。いつも明るく働く姿を見ていて、ずっと憧れていたんです」
世の中には私の理解できない趣向の殿方も居るもんだと、真摯な告白を聞きながら思ってしまった。女子力すらかなぐり捨てて、ただがむしゃらに働いていた枯れ店長に憧れていただなんて、世の中はまだまだ不思議でいっぱいなのだな。
しかし、不思議なことはそれだけではなく――むしろもっと理解できない状況が訪れて私を困惑させる。
「そうですか……それは、どうも。…………う、嬉しいです」
ときめいている。高鳴っている。自分の胸が自分の思考とは関係無しに、ものすごく。
なんだこれはと私は戸惑わざるを得ない。あまり肉付きの良くない胸の奥で、心臓がドックンドックンと大きく脈打っているのが分かる。異常に促進された血流は発汗や頬の紅潮まで促し、つまり私は今、とてもときめいて赤面して緊張していた。なんじゃこりゃ。
自分の顔が妙にこわばっていくのを自覚すると、彼の顔を見ていることがやけに恥ずかしくなってきて、たまらずに目を逸らしてしまった。けれど、視界から外したにも関わらず、彼が優しく微笑んだ事が雰囲気で伝わってくる。
「それ、OKって捉えてもいいですか?」
2度めの“なぬ?”は言葉に出さず嚥下した。代わりに横目でチラッと彼を窺えば、バッチリと視線が絡まる。そのまま釘付けになってしまった彼の表情は、はにかんだように笑う口元があまりに可愛らしすぎて、こちらの口角まで誘われるようにジワジワと上がってしまった。くそう、なんだそのスマイル可愛いなもう。