神が奪ったモノ
四方を山に囲まれた村
ルーフェル村
そこに住む人々は、互いに助け合いながら作物や家畜を育て、生計を立てていた。
村全体は小さく、村の住民全てが顔見知りと言えるほど小さな村だった。
そこに住む唯一の黒髪を持つ少年がいた。
名前をレーベンという。
「こらー!レーベン!!」
「へへっ」
『ラヴェンダ』と書かれた看板の店から飛び出したのは、黒髪のパンをくわえた少年だった。
店からレーベンを追いかけるのはラヴェンダの店主、ロリエッタ。
ロリエッタは綺麗な赤毛を三つ編みにし、この地域の伝統的な服にエプロンを付けている。
赤い髪はまるで太陽を思わせる。
ロリエッタはラヴェンダでパン屋をやっており、今レーベンがくわえていたのは売り物のパンだった。
盗みは盗みだが、村人達からすればいつもの和やかな日常風景だった。
「おー、今日もやってるねー」
丁度、稲を刈っていた麦わら帽子のおじさんが微笑ましそうに言った。
レーベンとすれ違った小さな子供は、「頑張れー!」と声援を送っている。
レーベンはそれに手を振り返していると、自分を追ってくるロリエッタが見えた。